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見たまま、感じたまま、思ったまま

月の祭り

この歌が好きだ!

くろ

月のまつり
作詞 KURO
作曲 大塚まさじ
唄  加川 良


この歌が好きだ!
第1回目は、加川良が唄う「月のまつり」である。
オリジナルは作曲者大塚まさじのアルバム「風の学校」に収められている。
この2人、いや作詞者のKUROを含めた3人の関係を表す言葉は、「関西フォーク」そして「西岡恭蔵」であろうか。

大塚さんは、言わずと知れた関西フォークのグループ「ザ・ディラン?」の一人で、ちょっと粘着質の声を持った、素敵なヴォーカリストである。
このグループの代表曲「プカプカ」は関西フォークの名曲の一つであり、僕のカラオケの愛唱歌だ。

最近でも、NHKの衛星のフォーク特集で彼の姿を見るし、それよりもここ15年くらいは、豊田勇造さんと同じような「歌と旅の暮らし」を実践しながら素敵なアルバムを発表している。

で、このプカプカの作者であり、ディラン?のオリジナルメンバーであり、大塚まさじの親友でもあるのが蔵さんこと、西岡恭蔵。そして彼の相棒であり、愛妻であるのが作詞家のKUROである。
KUROの作詞、蔵さんの作曲でのコンビは、蔵さんのアルバムのみならず、矢沢永吉等の他のミュージシャンにも多くの名曲を供給している。
また、まさじと蔵さんとのコンビで作られた曲も多いが、これは珍しくまさじとKUROとの共作。で、唄っているのは関西フォーク界の重鎮、加川良さんである。

この曲が収録されたアルバム「KUROちゃんをうたう」は、彼女が作詞した曲を、蔵さんや彼女の友人達が唄っているアルバムである。出演者は、友部正人、いとうたかお、シバ、中川イサト、高田渡、金子マリ、もんたよしのり、有山じゅんじ、憂歌団など、関西フォークを代表する面々。

みんなが大好きだったKUROの事を思いながら参加したアルバムである。
素敵なアルバムだけど、悲しいアルバム。
それは、これが彼女の追悼アルバムであるからだ。
乳ガンで亡くなった彼女を思って、蔵さんがプロデュースを行い、友人のミュージシャンにもちかけて、実現したアルバムなのだ。

そして更に不幸は続く。彼女の死後1年目にこの素晴らしいアルバムを完成させた蔵さんは、その1年後、自分から二度と帰らぬ旅に出てしまったのだ。だから、このアルバムを聴くと、今はもう居ない二人のことを思いだしながらそして残してくれた素晴らしい曲に浸るのだ。

大塚まさじは月の好きな人である。この歌以外にも「アフリカの月」とか
「こんな月夜に」とか月の付く歌がある。更に、自分の愛用のギターの名前は「月」と言い、更には息子さんの名前も「月」と言うのだ。

シンプルだけど幻想的な歌詞。ちょっと村上春樹の「世界の終わり」や、「海辺のカフカ」に出てくる森の中の村を思い出させるようである。
オリジナルは、バンド演奏の軽快なテンポでまさじが唄っている。

このアルバムの良さんの歌は、無伴奏でいきなりとつとつと唄い出す。
そう、あのコクのある良さんの声である。
シンプルな指でのピッキングのギターが寄り添い、2番目の歌詞から金子マリのバックグランドヴォーカルが入る。独特のハスキーボイス、存在感のある声。最近はあまりよい曲に恵まれず、ぱっとしないアルバムの多いマリさんだが、ヴォーカリストは生かすも殺すも曲次第だとわかる。

静かな夜にこの曲を聴く。月のあかりの下で、優しく生きる人を思う。
今は亡き、蔵さんやKUROの事、そして今を生きているまさじや良さんやマリさんを、そしてまた自分や自分の大事な人のことを。



月は満ちて昇り 星は輝き出す
人は集いながら 優しく生きる 優しく生きる

永い時を抜けて 会えるその日が来た
人も森も海も  微笑みあって 微笑みあって
喜びの夜 月の祭り

昔 インディアンは 花と遊びながら
光る命の意味 花に学んだ 花に学んだ

俺とこの星との 唄が唄えるまで
夢は満ちて引いて くり返すだろう くり返すだろう
約束の夜 月の祭り

月は満ちて昇り 星は輝き出す
人は集いながら 優しく生きる 優しく生きる


          [KUROちゃんをうたう」
       ミディ MDCL-1335~1336

(追記)
蔵さんが亡くなって1年後、大塚まさじが発起人となって、2人のゆかりの人達があつまり、日比谷野外音楽堂で野外コンサートを行った。
このライブの模様は衛星放送で放映されたが、涙が出るくらい素晴らしいライブだった。

出演者は大塚まさじ、友部正人、金子マリ、シバ、中川イサト、有山じゅんじ、桑名晴子、亀淵友香、いとうたかお、高田渡など、ゆかりの面々。替わったところでは俳優の柄本明、ベンガルなど。

出演者も、聴衆も気持ちが一つ。蔵さんとKUROちゃんを愛して、見送ろうとしている、その気持ちが録画で見ている僕にもビンビンと伝わってくる。腕を組んだままで身体を揺すっている人がいる。一緒に唄っているひともいるし、立ち上がって身体を揺する人、一人で踊っている人などみんなが思い思いの恰好でライブを楽しみ、2人を想っている。最近よく見る、全員が立ち上がって片手をまっすぐに挙げ、ムチウチのように首を振る、どっかのライブとは全然ちがう自然なコンサートであった。

昼前に始まり、夕闇の中で、出演者全員で「プカプカ」を合唱するラストまで、楽しめ泣けるライブであった。
亀淵友香が蔵さんの、「グローリーハレルヤ」を唄う。バックのコーラス隊がサビでハーモニーをつける。「グローリー、グローリー、ハレルヤ、愛は生きること、私が私であることを願いながら・・」。

この歌が収録されたアルバム「fairwell Song」は、KUROちゃん亡き後に出され、それが文字通り蔵さんの遺作にもなった。「愛は生きること」と高らかに唄った蔵さんが今は居ないと言うこと思うと、目頭が熱くなってくる。
どっかの会社がDVDで出してくれないかな・・・。



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